乳がんの抗がん剤治療と頭皮冷却法|Paxmanを実際に使ってみて

INTRODUCTION

以前の記事でも書きましたが、抗がん剤治療が決まったとき、私がいちばん不安だったことのひとつが、脱毛でした。

そんな中で知ったのが、抗がん剤治療中の脱毛を軽減することを目的とした「頭皮冷却法」です。

すべての病院で受けられるわけではありませんが、私が治療を受けた病院では実施することができ、抗がん剤治療中に頭皮冷却を行いました。

今回は、頭皮冷却法とはどのようなものなのか、そして実際に受けてみてどうだったのかを、私自身の経験を交えながら紹介します。

01|抗がん剤治療と脱毛

乳がん治療において、脱毛は女性にとって大きな問題のひとつです。

国立がん研究センターの資料では、乳がんの治療に伴う身体症状の苦痛として、「脱毛」が上位に挙げられており、痛みや吐き気などの身体的な症状だけでなく、髪を失うという外見の変化も、患者にとって大きな負担になることが分かります。

では、なぜ抗がん剤治療によって脱毛が起こるのでしょうか。

化学療法は、体内で急速に分裂する細胞を標的にすることで効果を発揮します。一方、毛髪をつくる毛母細胞も非常に活発に分裂する細胞であるため、抗がん剤の影響を受けやすく、その結果、脱毛が起こります。

02|頭皮冷却法とは

そこで、化学療法による毛包(毛の根本)へのダメージを軽減し、脱毛をできるだけ抑えることを目的として行われるのが、頭皮冷却です。

化学療法の前、治療中、治療後に専用の装置とキャップを使い頭皮の温度を下げ、毛包への血流を減少させることで、脱毛を抑制するものです。

この頭皮冷却システムは、イギリスのビールサーバーの冷却装置を製造していたPaxman社によって開発されました。創業者の妻が乳がんになり、抗がん剤治療による脱毛に深く苦しむ姿を目の当たりにしたことをきっかけに、ビールを冷やす技術を応用し、頭皮を冷やすことで脱毛を抑えられるのではないかと考え、1997年に開発されたものです。

現在、Paxman社の頭皮冷却システムは世界50カ国以上で承認・導入されており、日本の病院でも採用されているケースがあります。

私が使用したのも、このPaxman社の頭皮冷却システムでした。

03|頭皮冷却に必要なもの・費用

私が頭皮冷却を行うにあたって準備したものは、以下のとおりです。

・冷却キャップ本体(購入必須;132,000円※)
・処方された頭痛薬
・洗い流さないトリートメント
・防寒用品
・目の粗い櫛

冷却キャップは頭部のサイズにあうように事前にサイジングを行い、病院側で注文してくれました。また、上記に加えて、頭皮冷却を行う際には、実施料として毎回16,500円(※)が掛かりました。

※費用や必要なものは、病院によって異なる場合があります。

実施時は、霧吹きなどを使って髪を水で湿らせ、洗い流さないトリートメントをなじませます。その後、目の粗い櫛で髪を後ろにとかし、分け目や生え際がしっかり露出するように整えてからキャップを装着し、頭皮冷却を開始します。

MY TIP

冷却キャップ本体の購入費については、アピアランスケア用品の購入費として、自治体の助成金を上限10万円まで申請することができました。助成内容や対象条件は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の制度をご確認ください。

04|実際に使用してみて

専用の冷却装置の内部には、クーラントと呼ばれる冷却液が入っています。約マイナス4度まで冷却したクーラントをキャップ内に循環させることで、通常34〜37度の頭皮温度を、継続的に約19度まで下げていきます。

時間としては、投与前30分、投与中60分(私の場合)、投与後90分で、合計3時間に亘って頭皮を冷やし続けます。なかなか長い時間です。

感じ方には個人差があると思いますが、アイスクリームを食べた時みたいに、キィーンとすることもありました。またキャップにはある程度の締め付け感もあります。さらに、時間が経つにつれて身体もだんだんと冷えてくるため、看護師さんが用意してくださった電気毛布にくるまって過ごしていました。

看護師さんから、途中で頭皮冷却をやめてしまう患者さんもいると聞いたことがあります。私自身も、正直なところ、「これがなければ、治療そのものの負担はもう少し軽かっただろうな」「もうやりたくない」と毎回思うほど、決して楽な時間ではありませんでした。

05|頭皮冷却の効果

化学療法の初回投与から2〜3週間ほどで、脱毛が始まりました。

私の場合は、合計8回の治療で、前半4回と後半4回で使用する薬剤が変わりました。2回目の治療が終わる頃には髪の毛の脱毛は落ち着き、最も髪の毛が少なくなった時期でも、全体の5分の3ほどは残っていました(印象は変わるので、ウィッグは必要です)。

頭皮冷却をしている間は顔まわりもかなり冷えていたためか、眉毛やまつ毛も比較的残った状態が続きました。7〜8回目の治療になると薄くなったように感じましたが、それまでは大きな変化はありませんでした。

また、主に頭頂部から髪の毛が抜けたため、正面から見ると、「少し髪の毛が少なくなったかな?」という程度で見えていたと思います。後半の治療に入る頃には、少しずつ髪の毛が生えてくる感覚もありました。

最後の投与から1〜2ヶ月ほどで、髪の毛もだいぶ生え、ショートカットよりやや短いくらいの長さになりました。

治療中は決して楽ではありませんでしたが、ある程度髪の毛が残った状態が続いたことで、見た目の変化によるショックはそれほど大きくありませんでした。また、頭皮冷却を行わなかった場合と比べて、髪の毛が生えそろうまでの期間も短く感じられたため、頑張って続けてよかったと思っています。

もし頭皮冷却を受けるかどうか悩まれている方がいらっしゃれば、私の経験が少しでも参考になれば嬉しいです。


REFERENCE|参考情報
乳がんに関する情報について、詳しく知りたい方は以下をご参照ください。
国立がん研究センター がん情報サービス

※この記事は、私自身の経験をもとに書いています。症状や治療内容、経過は一人ひとり異なります。内容は一つの体験談として参考にしていただき、医療に関することは主治医や医療機関などの専門家にご相談ください。

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